†NOVEL†
「ねぇ、ユーリ?」
隣に座っている天使見習いは、夜空を見上げたまま私に質問だけを投げ掛けてきた。
「…ん?」
「お星様はどんなお話してるのかな?」
「さぁな…。」
「ん〜…ポエット聞いてくるね。」
そう言うと天使見習いは、自分の純白の羽を広げて夜空へと飛び立って行った。
「待ってくれ、私も一緒に…」
ポエットは私の声に耳を傾けずにどんどんと離れて行ってしまう。
「ポエット…。」
追い掛けても、追い掛けても距離は縮まず、逆に離れて行く一方である。
「ポエット!」
その時、何故だかポエットが私の元にもう二度と帰ってこない気がして恐くなった。
どんなに必死に名前を叫んでも、天使には届かずにとうとう見えなくなってしまった…。
私はその場で飛ぶことをやめて重力に身を任せた……。
「…り?ユーリ!」
「ん…?」
体を何度か揺らされて目をうっすらと開けると、目の前には心配そうなポエットの顔があった。
「やっと起きた…。もう、何回も呼んだんだよ?それにお外で寝たら風邪ひいちゃうよ?」
安堵したような溜め息を吐きながらも、寒くない?とまた心配そうに見つめてくる。
「私は…寝てしまっていたのか…。」
「うん、気付いたらユーリ寝ちゃってたからびっくりしちゃったよ〜。それに…。」
「それに…?」
「何か…魘されてたみたい…だったから…。」
そう言うと天使は難しい顔をして俯いてしまった。
「ふふ…。大丈夫だぞ。心配するな。」
私はポエットを安心させるように頭を撫でてやった。
暫くすると、本当?と言いながら顔を上げた。
もちろん、と言い聞かせるとポエットはいつもの笑顔を見せてくれた。
気持ちが落ち着いたところで、私はポエットを自分の隣に座らせた。
それから私が眠る前と同じように、木の枝に二人寄り添いながら夜空を眺めた。
するとポエットが…
「ねぇ、ユーリ?」
「…ん?」
「お星様はどんなお話してるのかな?」
「!…えっ?」
「ポエット、ちょっと聞いてくるね。」
そう言うとポエットは、再び羽を広げて飛び立とうとした。
私は咄嗟にさっきの事を思い出し、飛び立つポエットの手首を掴んだ。
「待てっ!」
「ほぇ?」
ポエットはびっくりした様にきょとんと目を丸くして私を見つめている。
「行かないでくれ…。」
「ユーリ…?」
いつもと違う私の言動に、ポエットが不思議そうに小首を傾げている。
よく見ると、強く握り過ぎた為にポエットの白い肌に赤い痕が付いてしまっていた。
「…っ。」
「すまない…。」
呟きながら手首を軽く引っ張り、ポエットを引き寄せるとそのまま軽く抱きしめた。
「ユーリ、どうしたの?」
少し恥ずかしそうにしながら首を傾げて聞いてくる。
「いや…ポエットがこのまま遠くに行ってしまいそうで…。」
「大丈夫だよ。ポエットはどこにも行ったりしないから。」
私を安心させてくれようと、優しい声色で言ってくれる天使見習いを愛おしく思い、そのまま額に軽く口付けをした。
ふと思う。
この幸せが永遠に続けばいいと…
*Fin
心配性なユーリさん。
柄にもないことを思ってしまったりしています。
溺愛しちゃってます。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました☆
燐月奈亞 2008,1,21
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