†NOVEL†

「なぁ、オフィ」

突然現れていきなり声を掛けられる。もう慣れたけど、久し振りに見たその姿に自然と頬が緩んでしまう。逢いたかったよ、神様。

「…俺を信じてくれるか?」
「信じる…?…神様の事は信じてるけど…どうして……?」

何だかいつもより真剣な表情…。
「…今からお前をこの世界から、消す。」
「………え?」

消すってどう言う意味?私が消えたら空間は歪み、"刻"が暴走してしまう。それは神様である貴方なら分かっている筈…。
どうして急に私を消すの?
魔女が神に恋心を抱いてしまったから?
どうして、どうして…どうして!

「…でも、私が消えたら空間が……」
「解ってる。空間の事は考えるな。俺様の事を信じるか、信じないかそれだけ答えろ」

信じるって、何を?考え直してくれると思ったのに…。

ごめんな、オフィ。こんな言い方しか出来なくて。でも…詳しくは言えないんだ。これ以上言うと効力が落ちるんだ。
…これで嫌われても仕方ないな。

「…信じるよ。私は神様の事を信じてるし、これからも信じる…」
「良く言ったな」

ありがとう。
こんな俺を信じてくれて。正直驚いた。
お前の気持ちを無下にしない為にも絶対に成功してみせる…!

「それじゃ、行くぜ?」
「…うん」

私は貴方を信じてる。どんな結果になったって絶対に後悔なんてしないよ?

わっ…神様って以外に力持ち…。体がふわっと浮き上がったと思ったら、強い風と閃光が私達を包み込んで…。
眩しくて目を瞑ってる間に神様は何か唱えているみたいだった…。

貴方に出逢えて本当に良かった…。私を使命から解き放ってくれて、沢山の想い出をくれて…。
天国にも、髪飾り…持っていけるといいな…。
もう、逢えなくなるのかと思うと淋しいけど…貴方との想い出を胸に私は新たな道を生きていきます───


「オフィ、目開けてみろよ」

私は死んだんだと思ってゆっくり目を開けた。
…あれ?天国って意外に───

「…ふぅ、成功したみたいだな。悪いな、ここのところ忙しくてさ」

脱ぎっぱなしの衣類、食べっぱなしの食器、散乱した楽譜や本の山…

「…ここ、どこ?」
「俺様の部屋。汚いのは勘弁な」

そう言いながら神様は私を抱えたまま窓のカーテンを開け放った。そこにはあの閉鎖空間にはなかった眩しい太陽光に、緑の木々…遠くに見える街並み…。

「景色はいいんだよな…。ようこそ、人間界へ。お前は"時を司る魔女"オフィーリア、から"普通の"オフィーリアに生まれ変わったんだ」
「普通の…私?」
「あぁ、もう何の指名も背負わなくていい。ただの女の子になったんだ。そんで…俺様とずっと一緒に"本当の時"を過ごす。いいな?」
「神様………ありがとう!」

泣くのか喜ぶのかどっちかにしろよな…。お前のそんなはっきりとした声は初めて聴いたぜ。
神の力をこんな風に使うなんて…権力振りかざしてるよなぁ…。
まぁ仕方ないか。俺様にもやっと護りたいものを見付けたんだからよ。

「神様、お掃除…していい?…少しでもお礼がしたくて……」
「おっ、よく言ったな。先ずは洗濯に掃除に料理…家事は全部覚えてもらうからな?覚悟しろよ?」
「…う、うん……がんばる…」
「ははっ、そんなに心配すんなって。慣れるまでは俺様が教えてやるからさ」
「うん、ありがとう…」


神様、大好きだよ。
愛してるぜ、オフィ。

「これから二人で本当の"時"を紡いでいこうな───」




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