†NOVEL†

「はぁ、はぁ…くそっ…」

 魔法の森、魔力が高まる月明かりの下。魔法使いの少女は愛用の箒を地面に投げ捨てると舌打ちをした。全身は泥だらけで、かなり疲労した様子だ。納得いかないまま箒を手に取ると、少女はそのまま練習場所を後にした。
 この疲れた状態では何をしても上手く行く筈がない、納得いかないが仕方のないことだ。少し休んでからまた来よう。

 少女は一旦自宅に戻ると、散乱していた魔導書を手に取った。もちろんとある図書館から借りてきたものだ。借りパク、とも言うが。

 彼女には天性の素質というものがない。ただの魔法使い、という名の通り、特別な能力が備わっているわけではなくただの魔法使いなのである。それでも幻想郷で他の妖怪と対等に位置するその強さは、人並み外れた努力の結果である。
 それほどの強さを人間である彼女が手に入れて尚、彼女は魔法の練習を続ける。ただの妖怪と比べれば圧倒的な実力差を持つ彼女だが、それでも彼女の実力を凌駕する者もいる。それを差し置いて満足などできるはずもない。



「…ん…。」

 魔導書を読んでいる間に寝てしまったのか気が付けば朝日が森の中に差し込んでいた。しまった、と息を吐いて少女は起き上がるとぐっと伸びをする。

「今夜、もう一回だな。」

 一人呟き、また月明かりが照らす刻を待つ。



 そうして何度目かの月夜の下。今日は満月だ。
 少女は一人、魔法の森の上空で弾幕を張っていた。夜空に輝く星の様に、彼女から放たれるのは星の形をしたカラフルな弾幕だ。一通り弾幕を出し終えると、軽く息抜きをする。そんな時、よく見る影が通りかかった。

「あれ、アンタ。何してるのよ。」
「ん?ああ、霊夢か。」

 珍しい時間に外出してるもんだな、と思い目の前で立ち止まっている霊夢を見た。霊夢はめんどくさそうにこちらを見返した。

「紅魔館の帰りよ。ちょっとパチュリーに呼ばれてね。」
「へぇ、あの引き篭もりにな。今度会う時は魔導書役に立ってるぜって伝えておいてくれ。」
「いやよ、めんどくさい。大体、勝手に持ってきたやつでしょ。で…アンタは何してるのよ。」

 逆に霊夢から問い掛けられる。魔理沙はちょっと溜め息を吐きながら少し考えるような仕草をした後、あまり答えたくなかったのか重たい口を開いた。

「…まぁ、アレだ。練習だ、いろいろと。」
「馬鹿ねぇ…。」

 そう言われると思ったからあまり言いたくはなかったのだが。霊夢は小馬鹿にしたように魔理沙を見る。魔理沙は居心地が悪そうに再び溜め息を吐いた。

「努力ほど無駄なものはないって昔から言ってるじゃない。」
「どうだろうな。私の努力は実ってると思うぜ?」

 事実、私は昔と比べて随分魔法の腕が上がったと思う。昔は悪霊の下でも修行したものだが、もうあの悪霊がいなくとも一人でやっていける。努力は無駄と言われるのは心外だ。
「そうかしら。ま、いいわ。…そろそろそこどいてくれない?通り道なんだけど。」
「おいおい、人間一人分回り込めばいいだけの話だろ。」
「アンタがどけばいいじゃない。」

 さも邪魔者でも見るかのように霊夢は悪態を吐く。魔理沙は仕方ないな、と腰に手を当てるとぐっと、霊夢から距離を取った。
 霊夢の方も最初からそのつもりだったかのように、いつの間にか手には符を用意していた。

「私は退かないぜ、霊夢!」
「あっそ、なら退いてもらうわ。」



*コメント


え?話が無理矢理だって?
大目に見てください社長。

この話は続きます。
次は戦闘パートになりますが、スペルカード制の幻想郷の戦いを書くのって難しい。生々しい殺し合いの方がまだ書きや(ry

 



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