†NOVEL†

アリスが家に帰って来ると外は大雨に見舞われていた。

「あれ?無い…」

家に着くと、直そうと思っていた人形が1体無いことに気付き、辺りを見回した。
糸を伝ってみるも途中で切れてしまっていたため、まず家の中から探すことにした。

数時間探しても見付からないので、外に探しに行こうとしたその時、部屋の中にノックが響いた。

「…こんな時間に誰かしら」

不審に思いながらも、玄関へと近づき扉を開ける。

「よう。」
「魔理沙」
「良かった。いなかったらどうしようかと思ったぜ」

訪問者は魔理沙だった。
雨の中、傘を差して箒に乗って来たらしい。

「どうしたの?私、今忙しいんだけど…」
「取り敢えず中に入れてくれよ」
「全く…」

口では面倒くさそうにするも、快く中に招き入れる。

「それで、何なのよ?」
「これ」
「あっ!」
「お前のだろ?」

魔理沙が差し出してきたものは、アリスの探していた上海人形だった。

「これ…魔理沙が見付けてくれたの?」
「いや、私じゃない。私は頼まれたから持ってきただけだ。」
「頼まれた?」
「あぁ、どっかの天使にな」

その言葉を聞いてアリスは少し胸が痛んだ。

「何かお前に会えないから渡して欲しいってさ。
 拾った時から破れてたから勝手に直しちゃってごめんなさいだと」
「そう…」
「雨の中見付けたみたいで服も乾かさないまま縫ってたけど、
 あいつ、縫い物何か出来ない癖に直したもんだから指が絆創膏だらけだったぜ」
「…へぇ」
「でもアリスちゃんのだから、って一生懸命だったぞ」

魔理沙からの説明に、昼間起きた出来事を思い返しては後悔の気持ちに襲われる。

「何があったか知らないけど、仲良くしろよ?」
「…魔理沙」
「あー?」


明くる日、魔理沙がポエットを訪ねて来た。

「あ、魔理沙ちゃん」
「よ。昨日はちゃんと渡してきたぜ。」
「うん、ありがとう」

ポエットは昨日言われた通り、幻想郷には来ていなかった。

「アリスちゃん、勝手に直しちゃったりして、怒ってなかったかな?」
「あぁ、それなら大丈夫だ。それからこれ」
「これは…?」

魔理沙が手渡したのは、袋に入っているクッキーだった。

「毒とかは入ってないと思うぜ?じゃあまたな」
「うん、またね」

その袋を渡すと足早に去っていく。
魔理沙を見送ってから部屋に戻り、その包みを開くと美味しそうなクッキーと手紙が入っていた。
その手紙の送り主はアリスだった。

”まず、上海のことだけど…ありがとう。
 縫い方は酷かったけど、上海も感謝していたわ。
 それから、この前は言い過ぎちゃって…悪かったわ。
 幻想郷にもう来ないでって言うのは取り消すわ。
 急には無理だけど、貴女の事邪険に扱わないよう努力するつもりよ。
 昨日は濡れたみたいだから風邪とかには気を付けなさいよね。
 アリス・マーガトロイド”

手紙を読んでアリスの不器用な優しさを感じたポエットは、後日クッキーの感想と縫い物を教えてもらいに幻想郷へ出掛けるのであった。


*Fin

本当は人形の件はなかったんですけど、アリスが悪い子過ぎると思い付け足しました。
結局は仲良しな終わり方になってしまいましたが、まぁいいかと←

ここまで読んで頂きありがとうございました☆
2009,2,20 燐月 奈亞

 



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