†NOVEL†

 ―――暗闇の中、静かに私は生まれた。

 目を開ければ何もない空間がただ広がっていた。ふわりと浮き上がるカラダ。ふと下を見れば人影が見えた。着物を着た少女。その姿は痩せこけ、最早生きることなどできない身体で、ゆっくりと顔を上げ、こちらを向いた。その下には巨大な魔法陣。先程まで光っていたらしく何らかの力を感じ取ることが出来た。
 その上に手を組むようにして私を見上げ、私という存在を心から喜んでいるかのような、笑顔を浮かべた。その笑顔は美しく、愛らしく…儚くも見えた。

 ―――そして少女は動かなくなった。



 静かに、少女の冷たくなった頬へ手を添える。そして私は何も分からないまま。少女に別れを告げた。

「さようなら、ニンゲン…」



 外は雪景色。どこかの雪山に作られた人里から離れた洞窟。そこからふわりと姿を現した着物姿の妖怪は人の温もりを求めて人里へと降りて行った。








 それから幾年もの月日は流れる。幻想卿内では様々な出来事が起こったが、問題なく幾度も解決し、人々の記憶からは薄れていく。人間を襲う妖怪もいれば護ろうとする妖怪もいる。問答無用に妖怪退治を嗾ける人間もいれば傍観する人間もいる。そんな何事も動じない幻想卿に再び異変が起ころうとしていた。
 まだその異変に気付く者は少ない。人里に発生する神隠し。無論、スキマ妖怪の仕業ではない。神隠しではなく、消滅。恐らくは消えてなくなっている。



―――空間の狭間からそれを傍観するスキマ妖怪。

―――紅い建物から事の大きさを測る吸血鬼。

―――本来あるべき場所へと現れない魂を捜す冥界の姫。



 新たな物語はここに始まる。










*コメント*


はい、最初なので短いです。なんだかよく分からないです。 続きはこちら

 



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